ママの手料理 Ⅲ

(養護園で弟みたいに面倒を見てたって事かな?…でも、2人は養護園の時点で仲悪かったんだよね、)


そもそも、自分達を兄弟だと言うなら何で仁さんは大也にあんなに酷い態度を取るのか。


(思いっきり嫌われてるじゃん…)


その言葉の真意を確かめるべく横を向くと、真面目な顔で私を見つめる仁さんと目が合った。


その目は、1ミリの笑いすら含んでいない。


「…本当だよ。養護園に居た時に隠れてDNA検査もしたんだ、間違いない」


面白くない冗談ばかり言って他人からの攻撃を容易くかわしながら人の事を観察し、そしてどんな状況下でも営業スマイルじみた笑顔を浮かべている仁さん。


そんな彼が私に見せる真面目な表情は、“冗談”に縋り付きたい私の思いを一瞬で崩壊させる程の破壊力を持ち合わせていた。



…信じるしかない。


6歳離れた仁さんと大也の共通点なんてほとんど見当たらないし、強いて言うなら長身で顔面偏差値が異常に高い事しか思い浮かばないけれど。


それでも、彼がそう言うのなら信じるしかないんだ。



私の仁さんを見る目が変わったのに気づいたのか、彼はありがと、と呟き、話を再開させた。


「…あいつはこの事を知らないし、教える気もない。何せ、実の兄がリスカしててナルシストで臆病で、それでもって二重人格だなんて分かったら愛想つかされちゃうでしょう?
…養護園に居た時、僕はあいつと仲良くしたかった。本当はもっともっと、大也と一緒に過ごしたかったんだ」