ママの手料理 Ⅲ

忘れていたが、彼は二重人格だ。


今でこそ皆が仁さんと壱さんを分けて捉えているけれど、そうなるまでの過程は長く辛いものだったはず。


彼は、この事を養護園の人に伝えたら里親は現れないと思ったから言えなかったんだ、と、ふっと息を吐いた。





その後。


「…1つだけ言いたい事があるんだけど、言っていいかな…もう隠すの疲れちゃって、」


仁さんに対して何か良い言葉をかけようとして、けれど既で口を閉じる、という事を何度か繰り返していると、本人が意を決したように私に話しかけてきた。


(あ、もちろん…)


この際、私を捌け口にして良いから何でも言ってもらいたい。


聞き手になるのは得意だからウェルカムだ。


私がさも当たり前だと言いたげに頷くと、彼は真っ直ぐ前を向いたまま深呼吸をして。


「大也の、…あいつの事で、」


怪盗mirage内で、犬猿の仲である男性の名を出し。










「……大也は、僕の…弟なんだ」








にわかには信じ難い、衝撃発言を投下した。



「へ、……?」


私の脳裏に笑顔を浮かべる大也の整った顔と、それに文句を言う仁さんの黄金比顔が浮かぶ。


(いやいや、いやいやいや何言ってるの仁さん)


確かに私達は自分達を家族と呼称していたけれど、そこに血の繋がりはない。