ママの手料理 Ⅲ

「よし、俺と一緒に荷物整理しよ紫苑ちゃん!…あれ、何で座ってるの」


大也だった。




「…急に飛び降りないでよ馬鹿ああぁ!死んだかと……死んだかと思ったじゃん!」


一瞬ぽかんと口を開けた私は、次の瞬間泣き笑いを浮かべながら再び叫んだ。


「いやいや、俺そっち行くって言った!伊達に怪盗名乗ってないから、俺の身体能力馬鹿にしないでー?」


普通、誰が隣のベランダまでジャンプして移動しようと考えるだろうか。


こんな真似は、やはり大也のような頭がおかしい超人にしか成せない。


「泣いてるの?ごめんごめん、でもほら手伝うからさ、ね?」


彼は泣いている私の頬に流れる涙を拭い、手を引いて立ち上がらせようとするけれど。


「………ごめん、安心したら腰抜けた…」



一泊置いて、2人の笑い声が部屋にこだました。



先程まで背後に感じていた仁さんの気配は、綺麗に消え去っていた。




「…それでさ、ビーチに行きたいなって思って」


「俺も思った!水着ないけど」


「そんなの買えば大丈夫でしょ」


「それもそうか」


その後、私達は2時間も荷物整理をし続けながら他愛もない話をしていた。