ママの手料理 Ⅲ

「死ぬぅぅううううあああああ!?」


自分の部屋の柵によじ登り、そのままヒョイと宙に身を投げた彼は私に笑顔を向けていて。


「ぇぇえええええ紫苑ちゃん!?」


私の裏返った叫び声を聞きつけて、私が転落したと勘違いした仁さんの大声が後ろから聞こえてくる。


「…ぇ、」


急に足の力が抜けた私は、その場にすとんと座り込んだ。


(ジャンプして飛び降りた…?え、?)



こういう時、どうすればいいんだったっけ。



後ろから、


「何だ紫苑ちゃん生きてるじゃん…寿命縮むから脅かさないでよ…」


という声が聞こえてくるけれど、今は明らかにそれどころではない。


(さっき、銀ちゃんが飛び降りて死ねって言ったから飛び降りたの、?助けに行かないと、いやでもこの高さじゃ……)


ただ動けずに脳みそだけが回転していき、しまいには手も足も震えてくる。



どうしようどうしよう、と、私の脳内がパニック状態に陥ったその時。





「…いやー、思ったより距離あったわ!まじ落ちるかと思ったアセアセ」


私の部屋のベランダの柵からいきなり手が現れ、地に叩きつけられて死んだはずの奴の声が聞こえてきた。


まるで女子高校生のようなイタい言葉を発しながら身体を持ち上げ、ベランダに華麗に着地したのは。