ママの手料理 Ⅲ

廊下には窓が設置されていなくて外の様子は見えないけれど、きっと目眩がする程高いんだろうという想像は出来る。


しかし、話の論点はそこではない。



私達は、示し合わせていないのに一斉に同じ事について勢い良く話し始めた。


「俺絶対に何があっても琥珀と相部屋が良い!お願いします!」


「…あの、私はご主人様と同じ部屋を希望致します…」


「いつもうるさい仁さんとだけは一緒になりたくないです。紫苑さんと一緒が良いです僕」


もちろん、話の内容は誰が誰と同じ部屋になるか、である。


「待って!1つ意見言っていい?…俺、航海と紫苑ちゃんは一緒にしちゃ駄目だと思う」


皆が思い思いに意見を言っていく中、大也が真面目くさった顔で挙手をした。


「何でだ?」


銀ちゃんが不思議そうに尋ね、わざとらしく声を潜めた大也は、


「……だって航海サイコパスじゃん。色々危ないから」


にやにや笑いながらその一言を投下した。


(…ちょっ、)


何年か前に彼の部屋で寝た事のある私は、航海が特に何もして来なかった事を知っているけれど。


「…偏見ですよそれ。話になりませんね首折りますよ」


「ならお前がチビと相部屋になればいい」


一泊置いて大也に爆弾の様に浴びせられる非難の声に、何も口出し出来ずに苦笑いを浮かべていた。