「電気消しますね!早くこっち座って下さい、再生ボタン押しますから」


そんな彼のを目の当たりにしても既に耐性が付いていて何とも思わなくなってしまった私はそそくさと電気を消し、ソファーに彼を誘導して1枚の毛布に一緒になってくるまった。


「どれだけ怖がりなの、紫苑ちゃんは…」


怖いのと寒いのでお互いの距離がゼロになるまで密着すると、隣のナルシストは呆れたように深く息を吐いた。




このドラマを見始めたのは3年前の年明け、大也がまだ集中治療室に居た頃だった。


大也と同じ毒にやられたOASISの幹部のラムダが心不全を起こして死亡したと聞いたその日、私達は全員眠れない夜を過ごしていた。


ラムダに注入された毒の量は大也の時よりも多かったとはいえ、怖いものは怖い。


どんなに目を逸らしても、大也に降り掛かるかもしれない最悪の可能性が頭をよぎっていた。


まだその時は私達も入院していたけれど、琥珀ー高杉 琥珀ーは背中を丸めて座りながら3秒おきにため息をつき、感情移入が激しい湊さんー吉良 湊ーは自分のベッドに寝転びながら既に泣いていて。


銀ちゃんー笹川 銀河ーはかれこれ1時間トイレから帰って来なくて、航海ー山崎 航海ーはベッドの周りのカーテンを締め切って外部との接触を遮断していた。


そして私は何も出来ず、ただ毛布を目の下まで被って虚ろな目で宙を見つめていた。