ママの手料理 Ⅲ

湊さんは、私が2つの家族を亡くした時と同じ程の苦しみをずっと味わい続けてきたのだ。



「だから、今回の件もフェニックスが関わってるのはすぐに分かったんだ。ジェームズがこんな事を僕達に依頼してくるなんて、今まではなかった事だったし」


そこまで話した湊さんは、ふっと自分の父親の方を見た。


その目には、何の光も宿っていない。


「多分、…いや絶対、お父様は怪盗mirageを壊そうとしてる。というより、本来なら僕が檻の中に入って殺されるはずだったんだ。実の子供が怪盗をやってるなんて、目障りでしかないから」


「ちょっとちょっと、壊すとか冷静に考えて無理なんだけど?俺何処で暮らせばいいわけ?ホームレスとかまじ勘弁」


そこで、我慢が出来なくなったらしい大也が口を挟み、


「ごめんなさい黙ります」


湊パパに睨まれ、蛇に睨まれた蛙の如く縮こまった。



「…それで、昔の僕だったら何の抵抗もしないでお父様の言う事を聞いてたと思う。でも今は、」


もう一度話し始めた湊さんは言葉を切り、ただ棒立ちになっている怪盗mirageの方に身体を向けた。


「…こんなに素敵な家族に出会えて、本当に本当に嬉しい。両親の事は好きでいたかったし僕を見て欲しかったけど、もう憎しみしかないよ。こんな人、殺されるに値する人間だ」