ママの手料理 Ⅲ

「夫婦仲が冷えきっていたんですかね」


「今は感想述べなくていい」


視界の端では、航海と銀ちゃんが小声で言い合っていた。



「ようやく口を開いたと思ったら何を言い出すんだ…。どうして私がそんな」


「見たんです。壱と15階付近に居た時に。見間違いかと思って確認しましたが、あれは…お母様でした」


銃口を湊さんに向けた湊パパが口を開いたものの、湊さんは真顔でそれを一蹴する。


「つまり、お母様も用無しになったという事ですよね?…僕みたいに」


(っ、……)


その時の湊さんの目があまりにも哀しそうで、私は両手で自分の肘をさすった。



「何で僕が怪盗mirageを結成したか、全部言います。…ですから、もう僕達に関わらないで下さい。お願いします」


すぐに私の鼓膜を揺らしたリーダーの声は、凛とした響きを持っていた。


「……それが出来なければ、殺します」


目を瞑って大きく息を吐き出した彼は、その双眸に私の姿を捉えて少し困った様に頭を搔くと。


怪盗mirageと湊パパ、両方の目を見ながらゆっくりと口を開いた。



「僕は、小さい頃からジェームズと2人きりで生活してきた。幼いながら、自分が両親に必要とされてない事くらい分かっていたよ。…だから、航海が言っていた『幸せな幼少期』なんて過ごしていないんだ」