ママの手料理 Ⅲ

彼らの方を見ると、湊さんは血の付いた袖で涙を拭いながら大也の方を見上げていて、


「…こんな不謹慎な嘘つけるわけない」


湊さんの涙に驚いたのか、大也が目を伏せながら答えた。


「っ……」



直後、最上階には短い沈黙が訪れた。


誰も何も言わなくて、聞こえてくるのは皆の息遣いと、湊さんの乱れた呼吸音。




「…ごめん、僕が……ティアラ盗もうなんて言ったから、…」


その後すぐに聞こえてきたのは、責任感の強いリーダーの弱々しい声で。


(…!?)


その声は明らかに泣いていて、丸まった背中は小さく見えた。


「湊…」


闘いや盗みどころではないその異様な雰囲気に飲み込まれそうになりながら、銀ちゃんが小さくリーダーの名を呼ぶ。


湊パパは、嗚咽を漏らしながら泣く自分の息子をただひたすらに感情のない顔で見下ろしていた。



「違うよ」


そんな中、強い口調で断言したある人の声に、私は驚いて顔を上げる。



鉄格子の隙間から見える、炎のように熱く強い力を持った瞳を湊さんに落としているのは、怪盗フェニックスから“怪物”と恐れられた男。


「湊は何も悪くない。俺達が盗みに入った行動は何も間違ってない。悪いのは、」