ママの手料理 Ⅲ

私達の家族から死人が出たのだから、一刻も早くこんな闘いを終わらせたい。


下の階で私達を待っているであろう仁さんを連れて帰って、最後の時間を皆で一緒に過ごしたい。



仁さんは、こうなるのが嫌で闘いを拒んでいたのかな。



…どうしよう、ホテルに帰っても部屋の中に仁さんの姿がないなんて。


もう、私はあの憎たらしいナルシスト発言も聞けなくて、やけに格好良い彼の美貌も見られないの?


壱さんから一方的に迫られるのは嫌だったけれど、こんな事になるならもっともっと話しておけば良かった。



(駄目だ、全然集中出来ない…、)


最大級の悲しみと闘っているはずの怪盗mirageは誰一人として涙を流していないのに、私だけが泣きじゃくっている。


(早く泣き止まないと、泣くのはまだ早いんだからっ…)


湊パパの話を聞いて決着をつけるまで、泣いてはいけない。


(泣いちゃ駄目、泣いちゃ駄目)


必死に下唇を噛み、その痛みで何とか涙を飲み込んだ私の耳に流れ込んできたのは、


「仁が死んだって、本気で言ってる…、?」


ずっと座り込んで動かなかった湊さんの、掠れた涙混じりの声だった。