ママの手料理 Ⅲ

いつの間にか笑美ちゃんのドローンが檻の近くでホバリングしていて、俯いたままの湊さんはぎゅっと拳を握っていて、


(あれっ……?)


ふと気付いてしまったその違和感に、私は眉をひそめる。


百歩譲って、銀ちゃんに予備のパソコンを持って来てくれた伊織はいいとして、



「ねえ、壱さんは……?」



会話を遮る事も躊躇せず、私は思わず声をあげた。


その事実を言葉に出した瞬間に激しい程の震えが身体中を襲ったけれど、そんなものは感じていないふりをして。



「……」


「おお、そういえば何処だ?見てねぇな」


私の声に反応した湊パパは口をつぐみ、我に返ったらしい銀ちゃんがキョロキョロと辺りを見回した。




「っ、……!」



私は檻の中に居るから、必然的に全員の姿を傍観する事になる。


だから、その異変にもすぐに気がついた。


あれ程憎しみを籠った目で湊パパを睨んでいた大也の手が、ぶるぶると小刻みに震え始めた事に。




(何、……?)


何も考えず、この状況下で壱さんの名を出した自分を殴りたくなる。


だって、どうしてそんな反応をするの。


琥珀の目から一瞬にして光が消えたのも、航海が息を飲んだのも、全部見えてるんだよ。