ママの手料理 Ⅲ

「おい、先に行くなよ…」


その直後、大也に対してぼやきながら部屋に入ってきたのは例の現役警察官。


彼の左腕は何重にもきつく包帯が巻かれていて、両手には銃とナイフがガムテープか何かで括り付けられていた。


血だらけのジャケットはとても痛々しいのに、当の本人は飄々とした顔を浮かべていて。


「ん?何だチビ、お前もムショ気分味わいたいのか」


そんな彼は、檻に閉じ込められている私を見て最初こそ目を見張ったけれど、その言葉はいつもの調子そのもの。


「出入口がねぇじゃねえか。…なるほど、随分巧妙な罠だわな」


「うぎゃっ!」


湊さんには目もくれず、しゃがみ込んだ大也の腕をわざとらしく踏み付けながらこちらに歩を進めた彼は、檻をしげしげと眺めて短く呟いた。


「だーから車で待機しとけば良かったものを…」


本当アホらしいな、と、今の私に最大級のダメージを与える言葉を発した彼は、ふっと片頬を歪ませて首を回し、その双眸に湊パパの姿を見つめて文字通り固まった。


彼がにやりと笑ったのは先程の言葉がただの冗談だからだと思うけれど、今彼の動きが固まっているのは本物の衝撃から来ているのだろう。



「……こいつ、何で居るんだよ」


湊パパを“こいつ”呼びする程に肝が据わっている琥珀は、大きく舌打ちをして湊パパを真っ直ぐに睨みつけた。