ママの手料理 Ⅲ

この場にふさわしくないその美貌で辺りをぐるりと見回した彼は、猛烈な存在感を放つ黒い檻を見つけて深く眉をひそめ。


「あれっ、紫苑ちゃん!?何でそんな所入ってるの!?湊も居るじゃん!もしかして俺一番乗りじゃなかった!?」


私が無線機で事前に連絡した事に気付いていなかったのか、大声で嘆きながらこちらに近付いてきて。


「ちょっと待ってね紫苑ちゃん、すぐ助けるから!」


なんの躊躇もせずに鉄格子に手を掛け、


「ぎゃああああ!何今の静電気!?俺そんなに蓄電してたのか、怖ぇ!」


鉄格子に流れる微量の電流を静電気と勘違いしたらしく、痺れる両手をブラブラと振りながら叫んだ。



「大也っ……」


先程まで最上階に立ち込めていた淀んだ空気を一瞬にして吹き飛ばした彼の明るさとどん臭さに、安心と呆れからまた涙が込み上げてくる。


「えっ、何で泣いてるの…?ごめんね、出れないんだよね?でも、何とかして出してあげるから大丈夫。俺を信じて」


いきなり泣き始めた私の顔を見て困った様に眉を下げて笑った彼は、自分の皮膚が鉄格子につかないように最新の注意を払いながら細い隙間に手を入れて。


「絶対に大丈夫。…ティアラ、ありがとね」


震える私の手を取り、ゆっくりと握ってくれた。