ママの手料理 Ⅲ

(怖い、此処から出して!)


何処からか血の匂いがした気がして、怖くなった私は四つん這いになって檻の前まで進み、鉄格子を掴みかけた。


その時、



「ああ、そこには触らない方がいいですよ?何せ、鉄格子には微量の電流が流れていますので」



此処には居ないはずの、紳士めいたあの人の声が聞こえてきたのだ。




(えっ、電流?)


私は鉄格子に触れかけていた手を急いで引っ込め、ぎゅっとティアラを握り締める。


同じように鉄格子に手を伸ばしていた湊さんは、その手を宙に浮かせたまま石像のように固まっていて。


(今の声、…)


身体を固まらせたまま目を左右に激しく動かしている湊さんから視線を外し、声が聞こえてきた方向ードアの方だーを見上げた私は、顎が外れそうな程にあんぐりと口を開けた。


何で、





「湊パパ………?」





彼が、此処に居るのだ。



絶対に間抜けな顔をしていたであろう私は、瞬時に咳払いをして取り繕って彼に話しかけたものの、


「み、湊パパ、どうして此処に居るんですか?此処は危ないです、怪盗フェニックスが居るから今すぐ下に……!?」


途中からある違和感に気付き、息を飲んだ。



怪盗フェニックスは、外部者は容赦なく殺す最低最悪の怪盗グループだ。


それなのに、どうして彼は無傷のスーツ姿で最上階に居るのだろうか。