ママの手料理 Ⅲ

そう、私は皆なら引っかからない様な怪盗フェニックスの最後の罠にまんまとはまってしまった。


私は、ティアラが置かれていた丸机を中心にした、約4畳程の広さの黒い檻の中に閉じ込められたのだ。



『ぎょえええ琥珀大丈夫!?あと少しだから立って!此処で俺の婚約者を死なせる訳にはいかないんだから!』


『さっきからごちゃごちゃ愛の言葉ばっかりうるさいんだよ、ちっとは静かにしろ白髪野郎!』


『ぬあっ、白髪!?のこのこ後から参戦してきた銀子ちゃんにだけは言われたくないね!こっちは後30秒で最上階だから!あっかんべー』


耳に付けたイヤホンからは、今まさに此処へ向かって前進中の仲間の声が聞こえてきたけれど、正直に言って脳がそれを言語として処理していない。


「し、紫苑ちゃん…大丈夫?怪我してない、?」


呆然と座り込んでいる私の目の前に倒れた人の頭が動き、床に激突して額を赤くした湊さんが私の顔を捉える。


「み、湊さ……私は大丈夫です、そんな事よりごめんなさい、こんな事に…」


この期に及んでも尚、彼は私の事を責めたりせずに優しい眼差しでこちらを見つめてくるものだから、申し訳なさと安心感で涙が溢れてくる。


「私、どうやったら此処から出れますか…!?」


広さや暗さは違えど、まるでクローゼットの中に閉じ込められたあの日の感覚が蘇ってくる。