(もしフェニックスが沢山居たとしても、私女だし見過ごしてくれるかも?いずれにせよ皆来てくれるし!)


絶対に有り得ない考えを抱いて1人で納得した私は、よし、と気合を入れて立ち上がった。



音を立てないように細心の注意を払いながら扉の前まで行き、扉に耳をくっつけて中の様子を確認する。


人の足音や話し声は、何一つ聞こえてこない。


(誰も居ないのかな?)


それならば好都合だ、サッと入ってパッと盗って部屋から出れば全てが終わるのだから。


(……よし、行こう)


扉の前で大きく深呼吸をした私は、無線機に向かって小声で


「最上階に着いたから、先に入るね」


とだけ連絡し、ドアノブに手を掛けた。


『え?ちょっと待って紫苑、僕が到着するまで動かないで!』


湊さんの焦り気味の声が間髪入れずに聞こえてきたものの、時既に遅し。




私は震える手に力を入れ、盗みの最終章へと繋がる扉を開けてしまっていたのだから。








(………誰も居ない、?)


数十センチだけ開けた扉の隙間から顔だけ覗かせた私は、そっと辺りを見回した。


その部屋の隅には本棚やソファー、小さな机等が置かれており、目の前にある大きな窓からはオレンジ色の光が室内に入って来ていた。