「3,2,1……着いた、…!」


わざわざ最後は階段の数を数え、ようやく悲願の45階に到着した私は、まるで42195mを走り切った選手のようにその場に座り込んだ。


最早、ティアラ奪還よりも45階に到達する事の方が目的のように思えてしまう。


(うわー疲れた、よく頑張った私…!)


エレベーターやエスカレーター等の自動移動装置に頼らずにここまで来たのだから、きっと5キロは余裕で痩せただろう。


他の階とは違い、45階は大きく長い廊下と、その突き当たりには1つの扉のみがあった。


つまり、ティアラが置かれているであろう部屋は突き当たりの部屋という事になる。



暑い暑い、と、私は額から流れる汗を拭いながら息を整えた。


今目の前の扉を開ければ、盗みの対象であるティアラを取り返す事が出来る。


けれど、銀ちゃんがスプリンクラーの装置を壊したり感電させたりしたのは最上階以外の階だから、最悪の場合最上階に強大な敵が集結している可能性もあるわけで。


そんな場所に、私が1人でのこのこと乗り込んでいいものなのだろうか。


(今45階の近くに居るのは湊さんだよね…待った方がいいかな?)


うーん、と顎に手を当てて考え込むものの、やはり一番乗りをしたいという欲望に勝てなくて。