ママの手料理 Ⅲ







全ては、いざとなった時に怪盗mirageを助ける為。


自分の醜く大きな罪を消せずとも家族の為に貢献したいという、切実な想い。





彼の抱くものの大きさをやっと理解した琥珀の心からは、彼を否定する気持ちがいつの間にか消え去っていた。




その後、段々と聴覚が戻ってきた琥珀の耳が捉えたのは、


「…ありがと、」


と、照れたようにはにかむ大也の小さな声。


しかし、伊織はそれには答えず、


「麻酔がないからそのままやるね。痛いと思うから、何か噛んでおいた方がいいと思う」


代わりに、静かな声でそう伝えた。


大也は強ばった顔で頷き、袖をまくった自身の左腕を口にくわえた。


「じゃあ始めるね。航海、大也が暴れないように押さえておいて」


その言葉に反応した航海が、覚醒したありったけの力を大也にかけて動けなくさせる。



そうして、またも琥珀の出る幕がないまま、大也の足にある弾を取る緊急手術が始まった。



伊織のピンセットが傷口に触れる度、彼の汗がそこに滴り落ちる度に大也は嫌がって身をよじり、


「大也さん、すぐ終わりますからね」


その身体をこれでもかという程に押さえつけながら、航海が静かに語り掛ける。


しかし、


「これ結構奥に入ってる……」


伊織の容赦ない独り言は、大也の目から生気を失わせていく。