ママの手料理 Ⅲ

まるで四次元ポケットの様に色々と出てくる箱に目を丸くしたた大也が、此処に居る全員が感じたであろう疑問を口にした。


「っ……」


伊織は、箱をまさぐる手を止めずに目を伏せて微笑んだ。


「……大也が意識不明になった時、治療法を探したくて医療系の本を読み漁ったんだ」


(あ……、)




瞬間、琥珀の耳から全ての音が消えた。


ただひたすらに頭の中で繰り返されるのは、伊織が発した言葉のみ。



大也が意識不明になったのは、遥か前の話ではないか。


しかも、弱り切った伊織に医療の本を渡して解毒剤を作れと無理難題を押し付けたのは紛れもなく琥珀であり、


伊織が蓄えた膨大な知識が披露される前、大也は自分で毒を分解して目覚めたのだ。


あんな短期記憶で詰め込んだような知識、数週間で忘れるものだと思っていたのに。



しかも、今の伊織の頭の中には骨折した時の対処法、身体の中に入ってしまった弾を取る方法など、様々な情報が入っている。


そして、それらは琥珀が渡した本とは分野が異なるはずだ。


という事は、


(こいつ、服役中に他の医療の本も読んでたのか…!?)



いきなり連絡したにも関わらず、文句一つ言わずに渡米してきた彼が持って来た食料、救急箱、ハサミの入った巾着袋。


その行動が意味するものに気付いた琥珀は、思わず息を飲んだ。