ママの手料理 Ⅲ

まあそういう反応を取るのも無理はない、何せ相手は裏切り者だ。


大也が伊織に対してどんな感情を抱いているかなんて知る由もない琥珀は、ただ黙って2人の様子を見守っていた。



そして、大也からの視線に耐えきれない伊織が黙って俯いた時。


「そうだ、伊織間に合ったんだよね!良かったー、嬉しいよありがとう!飛行機どうだった?Gやばくなかった?俺めっちゃ興奮したんだよねあの時!」


彼は、琥珀が予想もしていなかった言葉をかけたのである。


もっと非難の言葉が来ると思い込んでいたであろう伊織は、顔を上げて唖然とした。





「おかえり!」





何故なら、存在するだけで場の雰囲気が和むほどの太陽の明るさを持つ大也は、空白の3年間などまるで気にしていない様子で伊織に笑いかけていたからである。


「ぁ、……」


思わず涙が零れそうになりながらも、裏切り者は必死にそれを堪え。


「怪我は?」


努めて冷静に尋ねた。


「怪我?」


その言葉をオウム返しにした彼は、自分の身体を眺め回し。


「…そういえば、足撃たれちゃったあ」


自身の左足を指差し、まるで他人事の様に笑顔を作った。


「…分かった」


その言葉を聞いた伊織は顔を引き締め、血がべっとりと付いた大也のズボンをハサミで切り始めた。