ママの手料理 Ⅲ

「ちげーよカス」


あのまま落ちて死ねば良かったのに、と思ってもいない事を口に出すと、


「うーわ酷い!酷いけどそういう所もいいね!大好き!」


不器用ながら、手でハートマークを作って見せてきた。


「こんな所でイチャイチャしないで下さいよ。ほら、ホットドッグです」


人の目も気にせずに甘えてくる大也の魔の手から逃れようと身を翻すと、待ってましたとばかりに航海が大也の口にホットドッグを押し込んだ。


「ふぎゃ!航海…?…わ、ほれおいひい!まふたーどがほふてひひかんじ!(わ、これ美味しい!マスタードが濃くて良い感じ!)」


いきなり口いっぱいにホットドッグを詰め込まれた彼は、最初こそ航海の存在に驚いたものの、頬を緩ませて感想を零している。


これで少しは静かになったな…、と琥珀が心の中で安堵した時、


「…怪我してない?大丈夫?」


大也の隣にしゃがみ込んだ伊織が、心配そうに彼の顔を覗き込んだ。


「!?」


瞬間、大也は琥珀を見た時よりも大きく目を見開いて座り込んだまま後ずさった。


これは夢か幻かとでも思っているのか、慌ててホットドッグを飲み込んだ彼は手で胸を叩きながら穴が開くほど真剣に伊織を凝視して。


「い、伊織…?」


小さな声で、彼の名を呼んだ。