ママの手料理 Ⅲ

疲れた疲れた、とヒィヒィ言いながら後ろを向いた俺は、


「………え、?」





左胸を赤く染めた彼の姿を見つけ、目をひん剥いた。





(…どういう事、)


頭の中が真っ白になって、状況把握が上手く出来ない。


本人も状況を理解していないようで、困惑した表情で自分の胸から流れる血と俺の顔を交互に見つめ。


「う、グハッ……」


口から血を垂れ流し、その場にうずくまった。


「仁!?」


完全に女と銃の存在が頭から消え、代わりに恐ろしい程の冷や汗と動悸が全身を包み込む。


目を見開いた俺は、一目散に彼の元へ駆け寄った。


「防弾チョッキは!?何これ、血!?」


分からない、何がどうなっているのかさっぱり分からない。


彼の身体を触ると確かに防弾チョッキを着ている感触がするのに、自分の手にべっとりと付着するそれは明らかに血で。


「何で、どういう事!?どうしてこんな…」


左胸に手を押し当てると、彼の心臓の鼓動と共に新たな血液が外界へと押し出されていくのが感じられる。



ああ、彼はあの女が最後に撃った流れ弾に当たったんだ。


あの女は最期、俺ではなくて後ろに居る無防備な仁を狙いにしていたのかもしれない。