ママの手料理 Ⅲ

対する壱の目は鋭く尖っていて、その瞳には光などなく、殺人鬼と間違えそうな程に黒い。


普通に考えたら壱の方が近寄り難いオーラ満載なのに、俺からしてみたらどんな時も笑顔を絶やさない仁の方が気持ち悪い。



「意味分かんない、自分は闘えないくせに観戦したいって事?本当にそんな目的で出てきたんなら、今すぐ壱になってくんない?」


許可もなしに俺のチョコレートを手で折って口に入れた仁を睨みつけ、俺は自分の服に付いたそれを払って立ち上がった。


良い味じゃん、とか何とか呟いているそいつを完全無視し、首と両手をゴキゴキと鳴らす。



「…本当はさ、大也に言いたい事があって出てきたんだよね」


しばしの沈黙の後、指についたチョコレートを舐めながら仁が口を開いた。


しかしその台詞を聞いた瞬間、俺はやれやれと頭を抱えた。


「言いたい事?そんなの盗みが終わってからでいいじゃん!いい大人ならそのくらい考えられないの?もーまじで意味分かんない!」


自分は闘えないのに、俺に伝えたい事があるから、とわざわざ危険を犯してまで現れるなんて馬鹿としか言いようがない。


何なんだよまじで!、と吐き出すと、


「ごめん。でも紫苑ちゃんにも言われたし、本当に今じゃないと駄目だと思うんだよね」


いきなり、紫苑ちゃんの話が出てきた。