ママの手料理 Ⅲ

何せ、平和の象徴は鳩ではなく仁という方程式が出来る程、彼は闘いを拒否し続けているのだ。


ホラー映画やドラマは観れるくせに銃もナイフも握れない仁は、盗みの場に行く事自体以ての外だと公言していたのに。


(明日雪でも降るんじゃないの…?)


驚き過ぎて鼻血が出そうだ。


後ろを振り返ると、壱が俺に向かって頼む、と両手を合わせていた。


「3分だけだ。あいつは闘えないから、何かあればすぐ交代するからよ」


良いだろ?、と尋ねてくる返り血だらけのその姿は、こんな状況でも容姿のせいで輝いてみえる。


モデル顔負けのその容貌が俺に頼み込んでいるのだ、しかも相手は元不良という肩書き持ちの壱。


此処でナルシストと2人きりになるなんて反吐が出そうだけれど、断ったら双子の弟に睨まれるだけでは済まされないだろう。


(……)


こいつ、自分に都合の良い時だけその美貌を悪用しやがって…許せない!


ギリギリと歯ぎしりした俺は、


「…仕方ない、3分だけだよ!但し、敵が来たらすぐに戻ってきてよね」


大嫌いなナルシストの仁と元不良の壱のレア過ぎる頼みを天秤にかけ、苦渋の決断をくだした。


最も、20階に居る敵の数はかなり減ってきていて、あとは俺だけでも片付けられそうだった。