ママの手料理 Ⅲ

彼の言う通り、この感覚から察するに、最悪でも骨にヒビが入っているだろう。


足は縛られていないものの、足では鎖を解くことも立って逃げることも叶わない。


つまり冷静に考えて、今の自分は鎖の問題以前に完全に両腕が使えないという事である。


(待てよ、それならどうやって闘えばいいんだよ…!?)


琥珀の心を代弁するかのように、鎖がジャラジャラと音を立てた。



琥珀は、今まで左手と両足を使って闘いに臨んできた。


右手はあってないようなものだったから、左手の筋肉を鍛えて強化して対応してきたのに。


左手が使えず囚われの身になった今、琥珀は完全に怪盗mirageのお荷物となってしまったのだ。



(嘘だろ、)


言い返す言葉を探す余裕も無く、ただ愕然と目を見開いた琥珀に、


「お前、右手不自由だろ?その棒みたいな手首を見たら一瞬で分かったぜェ。左手を使えなくしたら、お前自身が使えなくなるってなァ!」


日本語を自由に操る敵から、容赦ない言葉が飛んでくる。


(……うるせーな、一旦死ねよテメェ)


ついこの間、仁に“琥珀は本当に死にたいと思ってる人の気持ちを考えた事がないんだよ”と言われたけれど、あれはまさにその通りだ。



琥珀は、今まで呼吸をするように死ねという言葉を言い続けてきた。