ママの手料理 Ⅲ

靄がかかったような頭を振って意識を覚醒させた彼は、取り敢えず目の前の敵を倒そうと立ち上がった。



「っ…?」



いや、何かに阻まれて立ち上がれない。


慌てて自分の身体を見回すと、自身の身体と椅子が鎖と紐で何重にもきつく結ばれているのが分かった。


(は?何だよこれ!?)


初めてのシチュエーションに、琥珀の目が見開かれる。


(いや、警察学校で縄と鎖の解き方は教わってる。大丈夫だ)



はるか昔、琥珀は警察学校で両手を使って縄や鎖から抜け出す方法を学んでいた。


今は使える手が左手だけになってしまったけれど、流石に出来ない事はないだろう。


すぐに早鐘を打つ心臓にそう言い聞かせた琥珀は、おぼろげな記憶を頼りに左手を動かす……


「いっ!?」


事も出来ず、左肘に走った猛烈な痛みに顔を歪めた。


(くっそ…、左手どうなってんだよ、動かねーじゃねえか!)


何だ何だ、何がどうなっているんだ。


自分の手が鎖でぐるぐる巻きにされて椅子の後ろで組まれているのは分かるけれど、余りの痛さに首を捻って確認する事すら出来ない。


「何なんだよ…、」


思わず、舌打ちをして小声で悪態をついた時。



「おお、起きたか?お前は高杉琥珀だな?」


ずっと自分に背を向けていた男が振り返り、俺の無様な姿を見て吹き出した。