ママの手料理 Ⅲ

頭の整理が追いつかなくなり、目を左右に泳がせて必死で言葉を探していると。


「俺はお前らと闘う気はねぇよ。何度も言ってんだろ、mirageに八つ裂きにされたらたまったもんじゃないって」


怪盗フェニックスという名前よりも自分の方が大事なのか、彼はわざとらしく自分を抱き締める素振りをしてみせた。


(本当に闘う気がないんだ…)


何だか肩透かしを食らった気分で、私は敵であるその人を見つめたまま固まった。


「話は終わりか?じゃーなー」


そんな私を見て、歯茎を見せて笑った彼は、


「ああそうだ。言い忘れてたが、さっき上の方に居たフェニックスをちょびっと倒しちまった!別に倒す気は無かったんだが、手が勝手に動いて止められなくてよー」


共食いとも取れる言葉を残し、颯爽と階段を駆け下りていった。



(……倒した?フェニックスを、倒した?)


それからしばらく、私は手すりから身を乗り出したそのままの姿勢で固まっていた。


頭の中をぐるぐると駆け巡るのは、緑髪男が最後に残したメッセージ。


あの人にとって怪盗フェニックスは味方なはずなのに、どうしてその人達を倒すなんて真似をしたのだろう。


私に銃を突きつけた時に弾が切れていたのは、それまでずっと味方に向かって発砲していたからだろうか。