ママの手料理 Ⅲ

ああ、最後にこうやって脅されたのはいつだっただろうか。


過去の出来事が走馬灯のように頭を駆け巡る中、ふと3年前のOASISとの決戦の日の事が頭に浮かんだ。



そういえば、あの日もこうして銃とナイフの選択肢を与えられた事があった。


けれど、あの時の敵は情が移ったのか、私の事を殺さずに逃がしてくれたのだ。


銃弾が貫通し、自分の身を犠牲にしてまで私を守ってくれた、命の恩人であるあの幹部の名前は、


「っ、ガンマ……」


あんなギリシャ数字はもう金輪際聞きたくもないと思っていたけれど、あの人のコードネームだけは抵抗がない。


確かに存在していたその人の名前を確かめるように、小さな声をあげると。





「ガンマ…?…やっぱりお前、あん時の!俺の兄貴が命懸けで守った2兆円の小娘だなぁ!?」




耳を疑う一言が、男の口をついで出た。



「…えっ、?」



男が言ったその言葉を何とか頭の中で反芻し、意味を理解した私は顔を覆った手の隙間から声の発信源を見上げた。


(兄貴って事は、…ガンマとこの人は兄弟なの…?)


「何だ何だその目はー?驚いてやがるのか、そうだろ!」


私と目が合ったその人は、さも可笑しそうに笑いながら拳銃を持つ手にぐりぐりと力を込めた。