ママの手料理 Ⅲ

先程聞こえた大音量の悲鳴は、航海のものだろうか。


何せあのサイコパスが大声を出す所なんてほとんど聞いた事がないから、確信はない。


(まあ生きてればいいの、生きてれば)


筋肉を使い過ぎて笑い始めた両足を押さえた私は、数分休憩しようと階段に座り込んだ。


あの時は皆の口論を止めたい一心で此処に乗り込んできてしまったけれど、せめて飲料水だけでも持ってくれば良かった。


だだっ広いリムジンの中には食料がたんまりあったし、きっと今頃は銀ちゃんが新たなポテトチップスの袋でも開けて独り占めしている頃だろう。


「はぁー足痛い…でもここまで来て戻るのもなぁ、」


少しは格闘を習った身だから、流石に死ぬほどの怪我はしないと信じたい。


それに、此処には怪盗mirageも居るからいざとなったら助けに来てくれるはず。



しばらく休み、上がった息を整えた私は、


「よっこらせ」


と、年配女性が言いそうな台詞を呟きながら立ち上がり、後ろを向いた。



次の瞬間。





「あれーっ、怪盗mirageって女居たの?」





いつから居たのか、今から上ろうと思っていた階段の踊り場から、新緑の髪を雑に括った長身の男が片足重心で私の方を見つめていた。