ママの手料理 Ⅲ

ひらりと身を翻して攻撃を避けた敵を追い掛けるように、自分も首を回す。


「お前、怪盗mirageの誰だ?初めて見る顔だな」


流暢な日本語を使ってくるその人は、琥珀のみぞおちに的確なパンチを入れてきた。


「っ、…名乗るわけねーだろクズが」


本来なら右腕を使って食い止められるはずが叶わず、モロに攻撃を食らった琥珀は歯を食いしばって痛みに耐えながら暴言を吐く。


「クズ?誰がクズだって?戯言はやめにしようぜ」


「此処にお前以外にクズはいんのかよ?死ねクソ野郎」


どう考えても警察官らしからぬ言動を繰り返す琥珀は、強烈な蹴りを相手の股間にお見舞いした。


(あー痛そうだな、)


瞬く間に相手の身体がよろめき、その場に倒れ込む。


股間を押さえて声も出せずに呻いているそいつを見て、鼻で笑った直後。





(っ………、?)


突如、琥珀の視界がゆらりと歪んだ。


何が起こっているのか理解が出来ないまま、琥珀の身体から力が抜けていく。


(何だこれ、……)


受け身の体勢も取れずに床に倒れ込んだ琥珀が最後に見たものは、



「…ざまあ、みろ」


先程股間を押さえて蹲っていた男が、にやにやと笑いながら感覚のない自分の右腕にスタンガンを押し付けている、そんな光景だった。