ママの手料理 Ⅲ

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「…大也、それどうしたの」


「爆弾飛んできたら怖いから頭守ろうと思って!それに髪色も隠せるしね、これが本物の一石二鳥ってやつよ!」


怪盗フェニックスのアジトの目の前に1列に並んだ俺達は、銀子ちゃんからの合図を今か今かと待っていた。


そんな中、俺ー伊藤 大也ーの右隣から不思議そうな声が聞こえて、俺は間髪入れずに答える。


「ああ、なるほどね…」


絶対に腑に落ちていないであろう返答をしたのは我らが誇り高きリーダー、湊である。


そう思うのも致し方ない、何故なら俺は今、工事現場用に使われるような蛍光黄色のヘルメットを被っているのだから。



今回の盗みがどれ程過酷なものになるかなんて、耳にタコが出来る程聞かされた。


けれど、こういうピンチをチャンスに変えるのが俺の仕事だ。


つまり、絶体絶命の状況でもそこに笑えるアイテムがあれば、人間何とでもなる!ということである。


「水鉄砲にヘルメット…舐め腐ってんだろお前」


左隣からは、壱のおどろおどろしい声が聞こえてくる。


「そんな事言わないで?ほら、集中集中!」


その顔の前でわざとらしく手を叩くと、


「あ"ー今すぐ死ねお前、殺してやろうか」


と、本気だと捉えかねない言葉が俺の胸を抉った、怖い怖い。