ママの手料理 Ⅲ

信号が青になり、湊さんがゆっくりとアクセルを踏み込む。


(湊さん、右側通行でも運転出来るなんて凄いな)


緊張が段々ほぐれてきて他の事にも注意を向けられるようになり、私はふと湊さんの運転スキルに感心して運転席の方を見た。



(!?)


そして、ただ黙って前を見据える彼の姿にぎょっとする。


何故なら、バックミラー越しに見えたリーダーの顔は、何処か思い詰めたような顔をしていたから。








「はい、着いたよ。武器持ってるか確認したら外に出てね」


それからすぐに、私達は怪盗フェニックスが経営している貿易会社の近くに到着した。


路肩に駐車した湊さんの落ち着いた声を合図に、大の男達が一斉にシートベルトを外し始めた。



「ねえ琥珀、ティアラ奪還したら最上階で一緒にツーショット撮らない?絶対映えると思うんだよね」


「最上階から突き落とすぞ馬鹿野郎」


大也と琥珀は普段通りのテンションでボケとツッコミをして、顔を見合せながら堪えきれずに笑い合っている。



「航海、今日は出来るだけ早く血を目に入れてくれるか?パソコンが死ぬ前にお前が覚醒すれば万事休すだからよ」


銀ちゃんがスタンガンを航海の方に投げながら尋ね、


「そんな無茶な…でも、僕に殺人を許可したと捉えて構いませんね?」