ママの手料理 Ⅲ

法的に父親と呼ばれる立場にあるジェームズさんは、大也達にずっと敬語を使っている。


何年もアメリカに居て、満足に連絡も取れなくて。


それでも大也にとっての彼は、養護園に居た自分を引き取ってくれた命の恩人であり、最大の敬意を払うべき相手。


本当は血の繋がっている犬猿の仲の兄弟を引き合わせ、“家族”と呼ばせた架け橋的な存在。


その繋がりをいきなり断つと言われても、大也の心に渦巻く感情は決して怒りや憎悪ではなく。


ただ、今まで築き上げた絆が壊れてしまうのではという大きな不安と悲しみで。



「…大丈夫だよ」


前を歩く琥珀の背中を見ながらぽつりと呟くと、隣の男がこちらを向いた気配がした。


「私達は盗みを成功させられるし、ジェームズさん達は幸せになれる。…それで、大也達との絆も、」


視線を右にずらすと、白い前髪の奥にある大也の目と目が合った。


「……切れるわけじゃ、ないと思うよ」



何を隠そう、私だって養子縁組をした身だ。


2つ目の家族は殺され、お葬式にもお墓参りにも参加出来なかったけれど、それでも私の中では彼らは家族として永遠に生き続けている。


その絆は、切れたりなんかしない。