ママの手料理 Ⅲ

「…いや、さっき他のお客さんを見てたら、随分幸せそうで。ゴミと同然だった僕とは全然違う人生歩んでるんだなって思ったら胸がギュッてなって、それで此処に…。だから銀河さんも、僕と同じかなって、」


(ああ…なるほど、)


そういえば、航海の過去も俺に負けず劣らず…というか俺よりも悲惨だったな。


「……お前もか」


そう掠れた声で呟けば、彼はハッとしたように顔を上げて、


「比べちゃいけないって知ってるんですけどね。…こういう時、1番虚しいですよね」


ははっ、と、能面の様な顔で笑い声をあげた。



「…お前、食堂戻る気ないだろ?どっかその辺座らねぇか?」


こういう気持ちは経験した人にしか分からないし、その言葉に出来ない鬱憤を吐き出せる人も限られる。


どうせなら、2人でこの惨めな気持ちを言い合ってすっきりするのも良いのではないか。


濡れたペーパータオルをゴミ箱に投げ捨てながら尋ねると、


「銀河さんはそれで大丈夫ですか…?僕は、戻らなくても構いませんけど、」


オロオロした様子で問うてきた。


「ああ、今何か食っても吐くだけだからな」


自虐的にそう呟いて乾いた笑い声を上げた俺は、行くぞ、と航海の横をすり抜けた。