ママの手料理 Ⅲ

「いや汚ぇから止めろ」


「分かりました」


全く、何をしに来たんだこの男は。


それにしても、20分もトイレに閉じこもっていたなんて。


鏡に映る俺の顔は、いつもよりも血色がなく顔面蒼白だった。


そして、航海はトイレに来たというのに個室に入ろうともせず、石鹸で手を洗う白い顔の俺をただじっと見つめている。


「…何だよジロジロ見て」


そのうち我慢出来なくなり、恥ずかしい…と口を開くと。


「…なんか顔色悪いですよ。食あたりですか?」


鏡越しに、眼鏡をかけていても分かる不安げな瞳が俺の目を捉えた。


「あーまあ、そんなとこだな」


「僕も同じの食べてたんですけどね」


曖昧に誤魔化すと、反応に困る言葉が返ってきた。


(…んだよこいつ、面倒くせぇ)


「…お前、さっきから何言いたいんだよ?何しに此処に来た」


埒の明かない会話に溜め息をつき、振り返って拷問の勢いで尋ねると。



「…あー、あの、」


そのタイミングで外国人がトイレに入ってきたけれど、俺達の会話は日本語だから聞かれる事を心配する必要は皆無である。


その外国人をちらりと見た彼は、言いにくそうに胸の辺りを押さえながら、途切れ途切れに話し始めた。