逃がさない、そう言わんばかりにさらに強く抱き締められる。少しの沈黙の後、篤人は言う。

「俺も好きだよ、雛鶴さんのこと。初めて会った時からずっとずっと……」

両想い、これほど嬉しいことはないだろう。美桜の瞳に再び涙が溢れ、頭の中が一瞬にして喜びに染まっていく。

「ねえ、一緒に逃げよう。二人で遠いところへ行って、暮らそう」

懇願するように言う篤人の言葉に、美桜はゆっくりと頷いていた。



パーティーが始まる夕方、いつもならばパーティー名前は美桜の気持ちはどこか沈んでいる。だが今日は浮き足立ってしまうほど、美桜の心は軽い。

(このパーティーが終わったら、まとめた荷物を持って小花井くんと逃げる……)

駆け落ちなど、まるでドラマのようだ。両親や家、そして香音人を捨てて自分は遠くへ行く。だが、罪悪感などはない。むしろやっと自由に飛び立てると胸がドキドキしている。

篤人が選んでくれたドレスを着て、髪を綺麗にセットしてもらう。メイクを顔に施され、アクセサリーをつけたら支度は終わりだ。