篤人がニコリと笑って言った後、自分の言った言葉にハッとして顔を赤くする。恥ずかしそうに両手で顔を覆うその姿に、「可愛い」と言われたことに、美桜も顔が赤く染まり、胸がトクトクと高鳴っていく。

「……ごめん。俺、変なことを言っちゃったな……」

篤人が両手を合わせながら美桜に謝り、美桜は慌てて「全然気にしてないわ!」と大声で言う。嫌な思いなど何一つしていない。むしろ、美桜にとって嬉しい言葉だった。

「私、すごく嬉しいわ。そんな風に言ってもらえて……。こんなにも今、ドキドキしているの」

「えっ、それって……」

美桜が花が咲いたような笑みを篤人に対して向けると、篤人の顔に驚きが浮かぶ。きっと今しか言うチャンスはないだろう。美桜は笑みを浮かべたまま、篤人に言った。

「私、小花井くんのことが好きです。生まれて初めて人を好きになりました」

「ッ!」

どれだけ想っても、この恋は実ることはない。嫌でも美桜は香音人と結婚させられる。だが、気持ちだけは伝えておきたいと思い、続ける。