鳥籠の姫




自由を一度知った小鳥は、籠の外をもっと知りたいと思う。

美桜は篤人と出会ってから時々変装をし、ラーメンやフライドチキンを食べに行った。そして、午前しか講義がない日に「午後も講義がある」と嘘をつき、午後から篤人とずっと行ってみたかったカラオケやゲームセンターで遊んだこともあった。

両親や香音人に秘密の関係が、どこか美桜の心を大きく刺激し、頭から篤人を離れなくさせていく。少し話せただけで、目が合っただけで、胸が高鳴っていくこの気持ちの名前は美桜にはわからない。だが、篤人に特別な気持ちがあることだけは確かだ。

「小花井くん……」

香音人とのデートの際も、美桜は篤人が今何をしているのかを考えてしまう。高級フレンチのお店で食事中にボウッとしていると、香音人に声をかけられる。

「美桜、デザートがきたよ」

「あっ!すみません……」

「ここのところ、ボウッとすることが多いね。大丈夫?」