彼がデキ婚するので家出をしたらイケメン上司に拾われました。

昌希さんは昼休みに彼女の旦那さんと会うと言っていた。私はいつものように定食屋で秋刀魚の焼き魚定食に舌鼓をうっていた。

彼女のストーキングの証拠を完璧にまとめていたので、旦那さんをギャフンと言わせられると思うし、伯父さんの所の顧問弁護士さんがついてくれると言うことで、話し合いはきっとうまくいくだろう。
会社に戻ってレストルームで化粧直しをしていると名前までは良くわからない総務部の女子二名が隣に立ってこちらを見ている。

多分私より年下?てか、フロア違くない?

「あのぉちょっと聞いていいですか?」

小さい“お”が言葉に入る子の話って何となく嫌な匂いがする。

「何でしょうか?」

「諏訪課長の家の近くにわざわざ引っ越ししたって噂があるんですけどぉ、本当ですかぁ?」

てか、一緒に住んでるんだけど。そういえば住所はそのままにしているから、総務だと調べれば違うことがわかるかも。

「何か問題でも?」

「本当は毎朝、駅で待ち伏せしてるんですよね?だって住所が違いますよねぇ?どいういうことなんですかぁ?」

ちょっと前までは、こんなふうに絡まれたら不安になってどうしたらいいかわからなくなっていたかも知れない、でも昌希さんはバレても構わないって言ってくれたから気持ちは楽だ。
だからと言って、バレていいことも無い。

「それは正式な住所変更依頼ですか?」

「違くて、相馬さんって諏訪課長の何なんですか?何か勘違いしてるんじゃ無いかと思って」

「諏訪課長の部下で補佐をしてますけど?」

「彼女とかじゃ無いんですよね!朝とか帰りとかベタベタして媚びてるのがバレバレなんですけどぉ。見苦しいからやめてくれない?」

えっと、彼女なんだけど。
何ていえばいいんだろう。

「あなたには関係は無いし、あなたこそ諏訪課長の何なんですか?」

「別に、諏訪課長は昇進を控えているんだから、あなたみたいなのが勘違いしてベタベタしていたら昇進に差し障りがあるといけないから害虫退治をしてるんですぅ」

今まで、社内で愛だの恋だのって縁がなかったから、こんなことは初めてだな。でも、改めて昌希さんがモテていることがわかった。
流石に、朝一緒に出勤は目立つよね。

「もう時間なので」
そういうと、そそくさとレストルームを出ると背後で「ちょっと」とまだ何か言っているのが聞こえた。

住所を見られる可能性があるから、駅が一緒という言い訳は無理だと伝えよう。

席に戻ると昌希さんが後から入ってきて、私に向かって親指を立てた。

レストルームの事があるので、ちょっと焦ったが、多分旦那さんとの話がうまくまとまったのかもしれない。

今日帰ったら聞いてみよう、そして今日は外で待ち合わせしようとラインを入れた。