彼がデキ婚するので家出をしたらイケメン上司に拾われました。

美里が女性警察官に抱き抱えられるようにしてパトカーに乗せられていく。
目の前を歩いていく時は彩春を抱きしめ、美里から見えないようした。

彩春をダイニングの椅子に座らせると、バッグを持ってくる。

警察は荒らされた部屋の写真を撮ったり、事情聴取をしてから帰った。

俺のミスだ。

「ごめん、昨日の俺のやり方が間違ってた」

彩春は下を向いて顔を横に振り、違うという意思表示をした。

「俺がちゃんと説明すればよかったんだな。元カノの話を聞かせたくなくて不自然な態度をとったから、不安にさせた上に怖い思いまでさせてしまった。俺のやり方が甘かったんだ」

彩春の頬を涙が伝う、その涙の落ちる先を見てギョッとした。
ストッキングの両膝のところが破れ、左膝は血が滲んでいた。
急いで茶の間に行き、タオルと祖母が契約している置き薬の箱を持って戻り手当をした。
緊張が続いていたのか、膝の痛みに気がついていなかったようだ。

今夜この家で眠れるのか心配になった。

「ホテルに行こうか?」

「昌希さんがいるなら大丈夫。この家がいい」
彩春にとってこの家と俺が安心できる場所になっているのなら嬉しい。

「じゃあ、今夜は二階で寝よう」

「うん」

彩春と二人で二階に上がり、彩春が着替えている間に布団を敷いて彩春を抱きしめながら横になった。

「この間、お昼休みに来たのはあの人?」

「知っていたんだ」

「うん、主任が昌希さんの彼女だって言ってた」

迂闊だった。元カノだとしても他人から聞かされるのは苦痛で不安だったろう。
彩春は裏切られ続けて来たんだから。

「それは正しくないな“元”彼女だ」

「会社の前の歩道のところで立っているのを見かけているの、特徴的な髪型で綺麗な人だったから。あの日、遅くなったのは彼女に会っていたの?」

「そうだ。ごめん、元カノとの揉め事に巻き込みたくなかった。でも、言っておけば今日のようなことはなかったかもしれない」

美里が待ち伏せしていたのなら、先に帰った彩春も見ている可能性があったんだ、つくづく判断の甘さに自分自身に腹が立つ。

「少し、不安になってた。今日、聞いてみるつもりだったの」

「そうか、だから何かおかしかったんだな。父親のこともあったのに、苦しめてしまってごめん」

「うん」

「彼女のことを話すよ。でも、そんなに面白い話でもないから眠くなったら寝てくれてかまわないから」


腕の中から規則的な呼吸音が聞こえる。
どうやら、話の途中で眠ってしまったんだろう、彩春が安心して眠れる場所が俺の元であることが嬉しい。
この先も、様々な試練があるかもしれない、でもその度に二人で乗り越えていきたい。