彼がデキ婚するので家出をしたらイケメン上司に拾われました。

祖母はせっかくだからと海の見える所で誰にも気兼ねなくゆっくりと過ごしたいと言うことで、大磯の有料老人ホームに入居した。

海が見えて2時間以内に駆けつけられる場所ということで、母親の兄、すなわち俺の伯父夫婦と相談しながら決めた場所だ。
月に1度、第二日曜日に祖母に会いに行く。それ以外にも行くことはもちろん可能だが、これも祖母が“自分の時間”を皆んなが大切にしてほしいということで来なくてもいいとは言っているが、それほど遠くでもなく祖母にとって孫は俺と妹の希未の二人しかいないし祖父に祖母のことを頼まれたという気持ちもあり、曜日を決めて訪問をすることにした。

不安定な彩春を一人で残していくのは少し不安もあったが出かけることにした。
家を出るときに玄関まで見送ってもらえてそれがとても心地良かった。

設備が整っていて、レクリエーションなどもあり結構楽しくやっているようで安心する。

「結婚は?いい人はいないの?孫贔屓じゃないけど昌くん、ここのスタッフさんにも人気あるのよ。紹介しようか?」

「大丈夫だよ、自分でちゃんと見つけるから」

「仕事が忙しかったり、それこそデートとかあったらそっちを優先して、ここは本当に空気も景色も良くて気楽でとてもいい所だから」

「わかったよ」

しばらく話をした後、横浜の伯父の所に寄って祖母の様子と伯父の会社につて話をしてから帰ると家は真っ暗で彩春は出かけたのかもしれない。車を駐車スペースに入庫すると今朝まで荒れ放題だった庭がスッキリしていた。

早速やってくれたんだ。
さすが、真面目だ。

茶の間に入ると真っ暗な中、彩春がテーブルにうつ伏せるように眠っている。
電気をつけてから彩春を呼ぶと目元が腫れて泣いていたことがわかった。
俺は何とかして彩春を手に入れたいと思って必死になっていたが、彩春は元婚約者を忘れられなくて一人で泣いていたんだろうか。

「泣いていたのか」
そう言って、細い身体を抱き締めると初めはポツリポツリと母親からの電話の話を始めた。
それは傷ついた彩春ではなく、妹を優先する母親のこと、妹に口汚く罵ったことに自己嫌悪に陥っていることを話した。

彩春を楽にしてあげたい、甘やかしてたくさん愛したいと思った。