彼がデキ婚するので家出をしたらイケメン上司に拾われました。

美里との連絡手段はすべてブロックをした。
共に過ごした三年という月日を壊したのは彼女だ。それなのに夫が浮気をしたからと、俺に声をかけるなんて人を何だと思っているんだろう。

ところが、数日後に彼女は公衆電話からかけてきた。「話がしたいの」の一言で通話を切りそれ以降はもう通話ボタンをタップすることは無かった。

公衆電話からの着信以外は平穏な日々を送っていた俺にチャンスがやってきた。

その日の彩春は朝から様子がおかしかったが仕事はきちんとこなして帰宅した。
最近つけていた左薬指の指輪も無かった。
何となく気になり集中力を欠いてしまうため、気分転換にコンビニのドリップコーヒーを買って戻ってくると帰ったはずの彩春がパソコンに向かっていた。
違和感があって心配したから夕食に誘ったが彩春の荷物は旅行カバンの様に大きく重かった。だから冗談で「家出でもしてきたのか?」と聞くと、嘘のつけないたちなのか俺の言葉があながち外れていないことがわかり、指輪を贈られた彼氏と同棲でもしていて喧嘩して帰るところがなくなったのかもしれないと思った。

話を聞くなら防音も効いて食事もでき気兼ねなく話が出来るカラオケルームに行った。そこで彩春の話した事は彼が彩春の妹とデキ婚するという衝撃的な話で、彼氏とは住んでいないが母娘3人で住んでいるため、妹とは顔を合わせたくなくて家を出たと言うものだった。
彩春は家族の為に自分を犠牲にして生きてきた事を聞き、改めて彩春の人間としての美しさに触れずっと押し込めていた気持ちが流れ出してきた。

お互いに障害が無いのなら、弱っている彩春につけ込んででも手に入れたいと、もう遠慮をしないと決めた。

その日、泊まるところを探しているとのことだったから、家には部屋が余っていたし一晩中話を聞いてやるという口実で家に誘い、さらに二階の掃除と庭の整理という口実をつけて同居をすることに成功した。

ただ、俺も健全な男だ。
2階にずっと好きで何度も諦めた女性が寝ていると思うと中々眠ることが出来ず、極限まで腹筋をした。腹筋マシーンがこんなに役立つとは思わなかった。

彩春は料理も美味いが、何よりも食べている姿が仕事中のキリッとした雰囲気から想像出来ないほど豊かな表情で美味しそうに食べ物を頬張る、そのギャップがかわいい。

後は、どうやって俺を上司としてではなく恋愛対象として意識させていくかだが、彩春を取り巻く環境は想像していたより複雑だった。