彼がデキ婚するので家出をしたらイケメン上司に拾われました。

家族を嫌う私をそれでいいと言ってくれたことが見知らぬ電話の相手に私を大切だと言ってくれたことが、この数日の心の靄(もや)を晴らしてくれた。

豆腐とワカメの味噌汁と小松菜の胡麻和え、鯵の一夜干しをテーブルに並べていると寝癖が残ったままの昌希さんが「おはよう」と言って頭にキスをする。
これは、そう、いつもの事なんだけど・・・昨夜の事を思い出すとちょっと恥ずかしい。

「今度の日曜日だけど空いてるかな?」

今度の日曜って第2日曜日だ、用事があるっていう日だよね?
「大丈夫だけど」

「会ってほしい人がいるんだ」

「え?ご両親とか?」
心の準備がっ!

「ああ、ゴメンそれはまたオンラインでも」

「オンライン?」

「親父の仕事の関係でシンガポールにいるんだ。あと2年くらいしたら日本に帰ってくるとは思うんだが」

「そうなんだ」
両親に会いと思ってるって思われたかしら。図々しとか思われないといいけど。

「この家の本当の主だよ。さて、そろそろ準備しないといけないんじゃないか?」

昌希さんが片付けをしている間に身支度をした。

この家の本当の主、昌希さんのこと知らないことが多すぎるけど少しづつ知っていけばいいよね。