「どういうこと」

朱夏の彼が来ると言われそこに悠也が現れた時以来、久しぶりに家に帰ってきた。
すると、更に久しぶりすぎるクズが家に居た。

そいつは、ダイニングテーブルの椅子に普通に座ってお茶を飲んでいた。

「彩春か?」

「私が朱夏に見える?まぁ、あんたは若い女に現(うつつ)を抜かしていて子供のことなんか放置、てか捨てたんだから、私が朱夏か彩春かなんてわからないわよね」

「すまない」

「すまない?そんな安っぽい言葉じゃ足りるわけないでしょ。あんたが女と面白おかしく暮らすために私たちがどれだけ苦労したと思ってんのよ」

目の前には記憶に残っている面影がほんの少ししか残ってないレベルのしょぼくれた男が項垂れて私の言葉にさらにしょぼくれ度が上がっていた。
しょぼくれ男の隣では母がオロオロしている。

「さっき、歯切れが悪かったのはこういうこと。朱夏には会わせたの?」

母さんはゆっくりと首を振った。
「お父さんを家に呼んだのは初めてよ」

「その言い方だと、前から会ってたわけ」

「半年前くらいに病院の清掃に入った時に偶然。それから何度か外で会っていて彩春や朱夏にも伝えておこと思ったんだけど、二人には、特に彩春には苦労をかけたし、お父さんが謝罪したいって言っていたから、今日会わせられてよかった」

「何それ、父さんが今日いるなら私はここに来なかった。なんでそんなに勝手なの、母さんも、あんたも、そして朱夏も」

「ごめんなさい、そうよね」

「母さんもしかして、こいつを許したの」

「病気をしてこんなふうになった父さんを放っておけないというか」

だめだ、父さんはきっと朱夏と同じ人種かも知れないし、母さんもなんかおかしい。

「私は許さないから、もう帰る」

父さんは項垂れたままで、母さんは慌てて椅子から立ち上がった。

「彩春なにか用事があったんじゃないの?」

本当は、昼のモヤモヤを発散するために母さんとおしゃべりがしたかたった。
でも

「母さんって、この人や朱夏には甘くて優しいのね。私に対しては厳しいのに。話すことなんてなくなりました。じゃあ」

「そ、そんなこと」

何かを言っているが、無視をして外に出た。

最悪。