小学6年の時に両親が離婚した。
それまで住んでいた一戸建ての家からアパート暮らしになった。ボロボロで狭い家では友達を家に呼べなくなった。
今まで家にいたお母さんは、朝早く出て行ったり、夜に出て行ったり不規則になった。
それでもお姉ちゃんがいてくれたからそれでもいいかと思ったら、大学に行くために寮に入ってしまって一人ぼっちになる事が多くなった。

寂しいのは嫌だった。

後から聞いた話では、お父さんが不倫していてその相手に貢いでいたせいで、預金も家も失って、お母さんはハウスクリーニングの会社で働き始め、時給のよい早朝や深夜の仕事を中心にシフトに入っていた。
お姉ちゃんも、新聞配達をしながらその奨学金で大学に行っていたため寮に入っていたからしばらくの間、家にいなかった。

高校生の頃、お姉ちゃんが就職してアパートで3人で生活するようになって楽しくなった。
大学に入ってからは、高校時代と違って友人との遊びにはお金が掛かるからアルバイトを始めた。

誰かと一緒にいると安心した。
大学やアルバイト先には誰かしら周りに居て、寂しくないし家に帰るとお母さんは相変わらず夜にいなかったりしたけど、お姉ちゃんが居てくれた。

大学3年の時、ゼミに参加する事になり親睦会として飲み会が開かれた。
その時、出雲先生の隣になって両親が離婚した話をしたら「寂しい思いをしたんだね」と言ってくれた。

お母さんは「わかって頂戴」
お姉ちゃんは「仕方がないから我慢して」
としか言ってくれなかった。
私はすごく寂しかったのに、だから出雲先生が私のことをわかってくれたのが嬉しかった。

飲み会が終わって私は二次会に行かないからみんなに別れを告げて駅に向かっていた。

駅が見えてきたとき背後から声をかけられた。