いつもより早く起きてシャワーを浴びてから朝食を作る。
焼きナスに冷奴、納豆に大根おろしを入れてよく混ぜふわふわにしてから刻み海苔をのせる。
味噌汁は玉ねぎと卵のたまたま味噌汁だ。

「おはよう、今日も美味そうだ」

会社ではビシッとしている諏訪さんがスウェットのズボンの裾が片方だけ上がっているとか、朝食を食べる時はまだ寝癖が付いているとか、そんな姿に色気を感じるとか。
やっぱり、私はヤバいかもしれない。

「どうした?」

「おはようございます、今日はよろしくお願いします」

「ああ、頑張れよ」

「このことが落ち着いたら庭に植えるものを考えようと思ってます。一緒に考えてもらってもいいですか?」

「もちろん」

カーナビに昨夜見つけた住所を入力して、ナビを開始した。
途中、受け取ってもらえるかわからないが、スイーツ店でグルテンフリーのお菓子を購入した。

「会ってもらえるかな、どう考えても私って不審者になるよね」

「あなたの夫の不倫について、なんて言われたらショックだよな」

「そうよね。あとで、朱夏本人が謝罪をすることは当然としても、一番の被害者である奥さんを苦しめてしまうことに迷っている。知らない方が幸せなのか知った方が良かったと思えるのか」

「相馬なら知りたい?」

車窓の流れる景色を眺めながら、朱夏と話をした時のことを思い出した。

「悠也を許せないと思ったのは、私には何も言わず一人で別れることを決めたことだったの。悠也は騙されたのだと知った後も、許せないと言う気持ちがあって、それがどう言うことなのか朱夏と話していて気がついたの。一夜の過ちで女性を妊娠させてしまった。と、相談してくれれば、一緒にその女性に会いに行ってこんなふうに拗れる前にわかったかもしれない、どうしても責任を取らないといけない状況で結果的に別れることになったとしても、私は納得ができたかもしれない。恋人として付き合った1年間という日々をたった一晩の女性に持って行かれた事が許せなかったんだと思う」

「そうか」

「諏訪さんにはお世話になってばかりですみません。諏訪さん、いい人すぎます」

ふっ
諏訪さんはなぜか鼻で笑った。

「相馬はチョロいな」

「え?」

「俺はいい人じゃない」

「え??」

「さて、カーナビはピンポイントに入れられなかったから、周りを確認しながら走るぞ、よく見てくれ」

いい人じゃないという話をはぐらかされた気がするが、今はIZUMO家を探すのが先決だ。