「さて、家はわかったがどうする?」

「念のために朱夏に出雲先生のフルネームが出雲喜郎准教授なら明日奥さんに会ってくる」

「それなら俺も行く」

「でも、そこまで迷惑は」

「乗りかかった舟だし、ただ相馬が迷惑でなければなんだが」

本当は嬉しい、一人だと心細い。
不倫相手の姉なんて奥さんからしたら憎い人間の一人だと思うし。
でも、こちらが悪いのに男性を連れていくのは奥さんに対して威嚇とも取られそうだし。
どうすればいいんだろう。

「一緒には来てほしいけど、奥さんに会うのは私だけにします。ただ、出雲喜郎が家にいたら厄介ですよね,出来ればまだ対峙したくない」

「まずは妹さんに出雲先生のフルネームを確認して明日、出雲先生の講義があるか確認したてみたらどうだ?」


確かにそうだ。
スマホを取り出しアドレスから朱夏の名前をタップする。

『お姉ちゃん、どうしたの』

「確認したいんだけど、出雲先生とは出雲喜郎准教授ってことで間違いない?」

「え?そうだけど」

合っている、と言うことは多分あのIZUMOも出雲喜郎ということで大丈夫だろう。行ってみる価値はある。
さりげなく諏訪さんをみると“公衆電話”と表示された着信を即切りしていた。
悪戯電話?
朱夏にはもう一つ確認しなければいけないことを思い出し自分の電話に集中した。

「出雲先生の講義って土曜日にある?」

「うん、ある。もしかして明日大学に来るの?」

朱夏の声が張り詰める。

「違うよ、大学にはいかないよ」

ほうっ
と声が漏れてくる。
大学に行かないけど自宅にいくけどねとは朱夏には教えない。

「それじゃあ、朱夏のブロックを解除するから何かあったら電話して」

「ありがとうお姉ちゃん」

「おやすみ」

「うっ・・」
朱夏の泣き声が聞こえてきたがそこで通話を切った。


「どうだった?」

「ビンゴでした」

諏訪さんは微笑みながら親指を立てた。

「電話、よかったんですか?」

「ん?」

「さっき、電話がきていたみたいだから」

そう言った矢先に諏訪さんの電話にまた“公衆電話”という文字が表示された。
諏訪さんがその表示をみると眉をひそめてから即切りした。

「さっきから迷惑電話が来て参ってるんだ。今日は風呂に入ってもう寝るよ」

もう、お開きだという合図かもしれない。

「今日はありがとうございました、おやすみなさい」

部屋に戻って布団を敷いてその上に座る。
今日一日、色々あり過ぎて疲れてしまった。
朱夏と出雲の事にケリがついたら私もきっと次に行けるきがする。
そうしたら、まずは庭にたくさんの花や野菜の種を植えよう。

公衆電話から迷惑電話って

もう何も考える事ができない。
明日の朝シャワーを浴びよう。

・・・