着替えてミーティングルームという名の茶の間に行くと諏訪さんはローテーブルの上にスマホをスタンドにのせ、モバイルパソコンを操作していた。

「コーヒーでも淹れましょうか?」

「ああ、そうしてくれ」

話しながらも目線はパソコン画面に向いていてその真剣な眼差しにもドキドキしてしまう。
悠也の時は、一緒にいると安心出来た。
でも、諏訪さんといるとちょっとした仕草に心拍数が上がってしまう。

コーヒーメーカーのガラス容器にコーヒーがドリップされ溜まっていく。
1週間ですっかり慣れた動作でカップを2つ食器棚から取り出すとシンクの調理台の上に並べ冷蔵庫から牛乳のパックを取り出す。

一緒に暮らして気がついたことがある。
諏訪さんはブラックコーヒーを飲んでいそうだったのにコーヒーにはたっぷりの牛乳を入れる。
ぬるくないですか?と聞いたら味噌汁は熱々がいいがコーヒーはぬるめがいいらしい。
真似て飲んでみると、ぬるめのカフェオレっぽい飲み物は確かに飲みやすかった。

二つのカップを持ってミーティングルームに戻ると一つを諏訪さんに手渡してから、隣に座る。

「ありがとう、桜花大学を調べてみたら出雲という人は一人だけ居て出雲喜郎准教授だそうだ。あと、義理の弟とビデオを繋げるけどいい?」

「え?諏訪さんがよければ」

私の返事を聞くとスマホを操作し始めワンコールで画面にはショートカットの綺麗な女性が映し出された。

『はーい!兄さん、あっ!初めまして噂の相馬さん』

「おい、余計なことを」
焦る諏訪さんとかちょっと新鮮かも。
そして、妹さんがどことなく諏訪さんに似ている気がする。

「はじめまして、相馬彩春です」

『鷺沼希未(さぎぬま のぞみ)です。兄さんをよろしくね』
希未さんは明るく手を振っていると隣に男性が映り込んできた。

『悪い、マサ。希未が相馬さんを見たいってうるさくて』

諏訪さんは画面を指差しながら
「鷺沼優、悪友で妹の旦那だ」

『悪友とは酷えな。違うとも言い難いが』

優・・・昨日の電話の相手は希未さんだったんだ。
なんだか、ほっとした。
え?
ほっとした??

自分の感情に驚いて小さく頭を振った。

「優はIT関連の会社をやっていて俺よりもそっち系に明るい」

「そうなんですね」

「少し相馬のプライバシーに触れることになるかもしれないがいいか?」

「えっと、それは?」

「出雲喜郎の自宅を知りたいんだろ」

「はい」

『なるほど、出雲喜郎について調べたいわけか』

「お願いします。家がわかると助かります」

『桜花大学の准教授なら、ある程度のデータが集まりそうだな』

どういうこと?