彼がデキ婚するので家出をしたらイケメン上司に拾われました。

「朱夏、いいかげんにしなさい。きっとあちらの奥さんは何も知らないかもしくは夫の浮気に心を痛めているはず。細矢さんを巻き込むのはよしなさい。堕胎手術の費用は私が出すし、病院への付き添いも私がするから。その前に、先生と話をしないといけないから今、連絡しなさい」

お母さんもお父さんの不倫に悩まされた。
奥さんの気持ちがよくわかるんだと思う。

「今は、先生に連絡先をブロックされていて」

朱夏も出雲も本物のクズだ。

「何をふざけたことを言っているの、連絡先を教えなさい私が電話するから」

父さんと離婚してから聞くことのなかった母の怒鳴り声。
今、母さんが連絡してもうまくいかないだろう、でもこのままにするのは絶対に嫌だ。
相手の奥さんに慰謝料を支払うことになっても出雲とかいう男をそのままにすることはできない。

これは私自身のケジメをつけないとこの先にいけない気がする。

「母さん、とりあえず落ち着いて。出雲さんに関して私に任せてくれる？朱夏もいいわね？」

「何をするの？」

「堕ろすにしろ、産むにしろ出雲さんと話をしないといけないでしょ。二、三日私に時間を頂戴、ラインのIDと電話番号を教えて。会う時は朱夏も一緒に会うから。いいわね！朱夏に拒否権はないから」

朱夏は打たれた頬を掌で抑えながら小さく頷いた。


「じゃあ、私は帰るから」

「彩春、細矢さんとやり直さないの？」
母が心配そうに言うと、朱夏の身体がまたピクっと震えた。

「もう、悠也との未来は見えなくなったから」

その一言で、朱夏はまた大声で泣き始めた。
泣き崩れる朱夏に「私が連絡するまで出雲と連絡を取らないで、それくらいは守ってよね」と言うと、泣きながら「わかりました」と答えた。