着替えをしてキッチンに向かうと卵を落としただけのインスタントの醤油ラーメンが二つ置かれていた。

「美味しい」

「簡単に作れてありがたい食べ物だよな」

「後で朱夏に電話します。相手のことを聞かないといけないし、悠也のことも話さないといけないし。お腹の子のことも考えないと」

「やっぱり、なんだかんだ言ってもお姉さんなんだな。でも、1番大切なのは自分自身だということを覚えておいてくれ」

「はい」


片付けを私がする間に諏訪さんには先にお風呂に入ってもらった。
スウェット姿に洗いざらしの髪でも色気を感じる。
あんなに悠也を好きだと思っていたのに、諏訪さんに惹かれているのがわかる。
でも、それはとても恐い。

「じゃあ、私もお風呂を頂いたらもう寝ます」

「ああ、おやすみ」


疲れた
こんな風にお風呂に浸かってゆったりすると少しだけ頭がすっきりする気がする。

朱夏の不倫、考えてみたら悠也の話だけで決めつけるのは違う気がしてきた。
悠也が嘘をつくように思えないけど、合コンに行っていた事は確かだ。でも、朱夏だって両親が離婚をした理由を知っているのに、どういうつもりなのかきちんと聞かないと。
今だって、朱夏のお腹の中で子供は育っているんだから。

風呂から上がって階段に向かう途中、茶の間に電気がついていたから一言声を掛けようと近づいたら話し声が聞こえた。

「今更、何をしに来たんだ」
「ああ、そうしてくれ。俺は会う気はないから」
「悪いな、優(ゆう)によろしく」

聞くつもりじゃなかったが聞き耳を立てていたようで気まずくなり音を立てないようにそのばから離れて部屋に戻った。
布団の上に正座をしてスマホを見つめる。
何度目かの深呼吸の末、アドレス帳から朱夏の名前をタップすると2コールで繋がった。

「お姉ちゃん」

「今日、悠也から話を聞いたんだけど、明日の夜に家に行くから朱夏も家に帰りなさい」

「はい」

「それだけだから」

「あの・・」

朱夏が何かを言おうとしたところで通話を一方的に切った。
朱夏の番号はブロックしているから、私から連絡しなければもう今日は朱夏の声を聞く事はない。

後は明日だ。